夢見る少年
2005年 12月 27日
1昨年の夏頃だったと思う。
オールディーズにかなり詳しい方が常連リスナーに加わった。
50代半ばの現役オールディーズ世代、映画音楽をこよなく愛する当人のラジオネームは「淀川短治」。
生放送中のリクエストはマニアックな曲ばかりで応えるのに苦労したが、生放送中のスリリングなやり取りをリスナーも楽しんでくれていた筈だ。
ある日、短治氏から私あてに1枚のCDRと手紙が送られてきた。
40年以上も昔にAM放送から家庭用オープンデッキ(当時カセットテープは存在していない)に録音したという曲の断片、曲名と歌手を知りたくて方々の洋楽番組に送ってみたが今までどこも相手にしてくれなかったとの事。
音源を持っていたのでその日の番組で全曲聴かせてあげた。
夢見る少年/フォー・プレップス
(DREAM BOY,DREAM/THE FOUR PREPS)
無理もない、今時こんな知名度が低い曲のリクエストに応える広域局はどこ探してもない。
音源管理担当者は既にオールディーズを知らない世代に入れ替わっているし。
辛抱強くリクエストを続ければ応えてくれそうなのは山下達郎氏ぐらいだろう。
カレッジフォーク出身で50年代後半~60年代前半にかけて数曲をTop40に送り込んだ彼らだが、日本では(多分)シングル2~3枚、この曲と「ビートルズへの手紙」がごく一部のオールディーズファンに知られているのみだ。
少年時代の夢が40年の永い時を経て、意外な形で実現した短治氏、今度は現物を入手したくなったらしく、海外のオークションサイトを半年間監視し続けてついに落札した。
価格は送料別で50ドルだったそう。
早速お礼にと、収録曲とEP盤の印刷部分をCDRにコピーして送ってきた。
その他にも自ら編集した未CD化のオリジナル音源満載の作曲家別映画音楽集(現在市販されている映画音楽のオムニバスは再録物が多い)や、入手困難な音源をギッシリ詰め込んだCDRを次々と局に郵送してくれた。
その数は30枚を超える。
膨大な時間を費やしたであろうことは想像に難くない。
感謝すべきはむしろこちらのほうなのだが、本名も電話番号も明かさない短治氏、対面も電話連絡も果たせぬまま番組が終了してしまった。
全くの見ず知らず同士を簡単にくっつけてしまう音楽の力。
いつかお会い出来るだろうという淡い期待を胸に秘めつつ、「夢見る少年」を時々取り出しては聴いている。