趣味の手作りログハウス、音楽、愛車、出張先での出来事他、ランダムに書き綴っていきます。ちなみにHNは大好きなBeachBoysのヒットナンバーから取りました。


by funfunfun409
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ある教則本に関する覚書き

楽器を吹く人が誰でも最初に行うウォーミングアップ。
まずロングトーン、音階、リップスラー、それから簡単な練習曲などを吹いて徐々に演奏モードに入っていく。
私は少々違っていて、最初にペダルトーンから始める。
ペダルトーンというのは、通常の楽曲で使用する最低音よりも更に5音~1オクターヴ以下の音域をいい、オルガン奏者が踏む低音ペダルに例えてそう称しているようだ。
ペダル音域で正確に音程をガツンと当てるのは意外と難しく、息の流れが弱いと楽器が鳴ってくれない。
ブランクが長いと呼吸が浅くなり(平常生活時に戻ってしまい)、音量・音質・音感が乏しくなりがち。
それを何とかしようと無意識にアンブシュアを変えたりして調子を崩すと修正しずらいので、正しいアンブシュアと適切なブレスを取り戻すにはペダルトーンを用いたウォーミングアップが私には最も手っ取り早い。
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今から26年前、高校2年の時に買った『マジオ金管教本』。
(原題は The Original Louis Maggio System For Brass)

“ペダルトーン”の概念を最初に我が国に持ち込んだのが1975年に翻訳出版されたこの教則本だといわれている
要約すると、この本は1919年に不慮の事故で唇に重傷を負った米国のトランペット奏者ルイ・マジオ氏が再起をかけて編み出した独自のトレーニング方法を、本人亡き後に弟子のカールトン・マクベス氏が体系化したもの。

この教本の最大の“売り”は、前述のペダルトーンに“マジオ・リップス”と称されるアンブシュア、音域に応じて変化する“シラブル”(口腔容積)とタンギングを組み合わせる事によってやがて『ダブルハイC(チューニング音の2オクターヴ上)』というとてつもない超高音域をマスター出来る(筈)というもので、噂では多くのラッパ吹きが挑戦したにも関わらず、ほぼ挫折したらしい。
“下手すると潰れるから中途半端に手を出すべきではない”
“調子崩した人が最後にすがる教本だ”
などといった風説をアマチュアの端くれである私ですら耳にした覚えがある。
途中で行き詰ったという点では私も同じで、確かに常用音域より下の音を豊かに響かせるのは巧くなったが肝腎の演奏技術は「足踏み状態のまま」という事だ。
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有名な“マジオ・リップス”のチンパンジー君とルイ・マジオ(右)。
理想的なアンブシュアとされているが、少々唇を突き出し過ぎじゃないかと思う。
大学吹奏楽部の先輩ホルン吹きが猿に似ていたので、顔の部分だけコピーしてホルンの絵を描き、部室に貼っておいたら翌朝「オマエだろ!」と即座にバレてしまったのをこの写真を見る度に思い出す。
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本書序盤、呼吸法と最初のメソッド。写真の人物はルイ・マジオの弟子でこの本の著者であるカールトン・マクベス氏。
余白に書き込みしたのは他の教本も読み漁っていた20歳前後と思われる。
呼吸法に関しては、フレッド・フォックスやフィリップ・ファーカスの教本のほうがずっと丁寧に書かれており、安定した演奏を続けるためにはアンブシュア云々よりもそちらのほうが重要、というのが今や常識であろう。

蛇口を開かなければホースの水が遠くへ飛ばないのと同じ理屈で、今にして思えばこの教本にはこうした基礎的な部分をレクチャーする配慮に欠けているように思える。

それなりの技術・音楽性が身に付いた奏者を前提に書かれているこの本に丸裸で立ち向かったところで頓挫して当り前か?
“私のようなアホでも解る平易な内容なら良かったのに”などと、絶版になって久しい過去の書物にケチ付けるのはもうヤメよう。

ボロボロになったこの本にヒモを通してまで使い続ける理由。
それは、顔面負傷によるアクシデントから1年間暗中模索して新しい奏法の概念を作り上げ、見事に復帰したルイ・マジオ、そして弟子で著者のカールトン・マクベスも2度の交通事故で同じような目に遭ったにも係わらず、師と同様にカムバックを果たしたという「復活の美学」に大いに勇気付けられたからに他ならない。

斯く言う私も13年前、当時白石区川下にあった「味の利平」で最激辛の十割鉄火を平らげ、意気揚々と店を出て間もなく立ち眩みを起こして電柱に顔面を強打、前歯を2本折り上唇の中心部を4針縫うという怪我を経験した。
唇を裂いた人でも必死に努力すれば復帰出来る。それに比べれば自分なんて。。。
この本のお陰で楽器を手放さずに済んだとも言える。

どうやら書き過ぎたようだ。
「ロッキーのテーマ」の間奏部分で超高音のトランペットを耳にした方も多いと思うが、ハイノート・ヒッターであるMaynard Fergusonも実はルイ・マジオの門下生であった事を最後に付け加えておこう。
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by funfunfun409 | 2007-12-21 12:56 | 吹奏楽